頚部、肩、上腕などが痛くて

問題35

84歳の女性。1か月前から朝に両手のこわばりを感じるようになり、両側頚部、両肩、両上腕、腰部、両側大腿部の痛みと倦怠感も出現していた。1週間前から痛みが増強してきたため来院した。

現症:血圧163/76 mmHg、脈拍91/分、体温 38.0℃。Spo2 98%、身長 151 cm、体重 49.5 kg。皮膚、可視粘膜に貧血、黄疸を認めず。胸腹部に異常を認めず。両側肩、上腕に把握痛あり。上下肢に浮腫を認めず。筋力低下なし。四肢腱反射に異常なし。

検査所見:尿所見:異常なし。便潜血陰性。血沈102 mm/1時間。血液所見:白血球7800/μL、赤血球359万/μL、Hb 10.8 g/dL、Hct 32.9%、血小板30.0万/μL、血液生化学検査:TP 6.5 g/dL、Alb 3.2 g/dL、BUN 15 mg/dL、Cr 0.73 mg/dL、AST 15 U/L、ALT 15 U/L、LDH 171 U/L、CPK 45 U/L、免疫生化学検査:CRP 9.16 mg/dL、抗核抗体<40倍、RF定量 陰性、抗CCP抗体 2.0 U/mL、MPO-ANCA <1 U/mL、PR3-ANCA <1 U/mL、CEA 1.5 ng/mL、CA19-9 11.8 U/mL、CA125 11.3 U/mL

両手の単純レントゲン検査で異常を認めず。

1)本疾患に合併することがあるものはどれか、1つ選べ。

(a)顕微鏡的多発血管炎

(b)好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

(c)多発血管炎性肉芽腫症

(d)結節性多発動脈炎

(e)巨細胞性動脈炎

2)対応として適切なものはどれか、1つ選べ。

(a)副腎皮質ステロイド薬の投与

(b)免疫抑制薬の投与

(c)非ステロイド系抗炎症薬の投与

(d)プレガバリンの投与

(e)抗生物質の開始

解説(オリジナルは『Dr. Tomの内科症例検討道場』第3版症例61)

 高齢者、1か月続く朝の手のこわばり、両側頚部、両肩、両上腕、腰周囲、両側大腿部など体幹部に近い筋肉痛、両側肩、上腕に把握痛、データではRFや抗CCP抗体が陰性で、通常の慢性関節リウマチではなさそうであるが、特に目立った異常は、CRPの上昇と血沈の異常な亢進、筋肉の痛みを訴えているにもかかわらずCPKは正常、などに注目すると、リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica; PMR)を疑うことは容易である。本疾患は原因不明の肩、腰周囲の筋肉痛を起こし、CRP高値、血沈亢進などの炎症反応を認めるのが特徴である。しかし、これといった特異的な決め手となる検査がないため、診断は関節リウマチなどの他の膠原病や感染症などを否定したうえで総合的に行われる。いくつかの診断基準が提唱されているが、そのひとつを例に挙げると

1. 1ヶ月以上続く、首、肩、骨盤周囲のうちの2つの部位の両側性の痛みとこわばり

2. 1時間以上の朝の手のこわばり

3. プレドニゾロン20 mg/日以下で劇的な改善

4. その他のリウマチ疾患が除外できる

5. 50歳以上

6. 血沈が40 mm/1h以上

これらの全てがそろったものをPMRとする。(Healey、1984年)

今回の症例でプレドニゾロン20 mg/日を投与したところ、すみやかに効果が出現し、3日目にはほとんど症状も消失したため3も満たしているといえる。以上より、本症例はPMRと診断した。

また本疾患に合併するものとしては頭痛、側頭動脈の怒張などをみた場合に疑うべき側頭動脈炎であるが、問題21で解説したように、cranial giant cell angiitis(C-GCA)に分類され、巨細胞動脈炎のひとつの病型である。これが疑われた場合は、確定診断のために側頭動脈生検を行うことが望ましい。

解答 1)(e)、2)(a)

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