病魔大王の戦国武将討伐 第2話

年間4話の予定となっていたシリーズですが、早いもので第2話の投稿の時期にきてしまいました。今回は駿河の守護大名から戦国大名へとのしあがった今川義元の話です。

戦国時代に駿河の国は、室町幕府から守護に任命された今川氏が治めていました。駿河に来て11代目の義元は、領内で採掘された金を利用して資金源とし、一部の商人とも癒着しながら領内を栄えさせていました。領内ではのちに安倍川餅として知られるおいしい餅も作られており、義元は極上の餅を献上させ、食事のたびにこれを食べるのが習慣になっていました。やがて義元は室町幕府の権威を楯にして西に勢力を広げようとしましたが、ここで目にさわるのが尾張の若い新興勢力織田信長でした。応仁の乱後、室町幕府の権威は失墜していましたが、これを雲の上でみていた病魔大王は、「義元め、滅びゆく室町幕府の権威を楯にするとは時代錯誤もはなはだしい。こんな者がおるからいつまでも戦国の時代が終わらんのじゃ。」というと、再びミクロの戦士となって地上におりたち、城内の厨房にしのびこみました。天上から持参したのは特製の高カロリー添加物。これは口の中では甘さを感じさせず、胃の中で高カロリーの添加物となる特殊加工がされており、これを毎食の御飯と餅に混ぜていました。半年ほど厨房に通い続けた結果、義元はぷくぷくと脂肪太りの体型になり、BMIは35を越え、馬に乗ることも困難になっていました。「殿、少しは馬にでも乗って運動をされてはどうですか」という家臣からの忠告にも「わしには馬は不要じゃ。幕府から輿に乗ることとお歯黒を塗る事を認められておるからのう」と、一向に聞く耳ももたず。さていよいよ織田信長の領内に攻め入る日となりました。2万5千の大軍で攻めかけた義元でしたが、小さな砦は難なく攻略し、「やはり信長恐れるに足りず、そろそろ本陣を攻めるか」といったその時です。義元の腹が「グー」となりました。「いや、あわてることはない、ここで昼飯にするぞ。」と言い、桶狭間というくぼ地で昼の休憩です。物見役を多数送って敵の動向をつぶさに観察していた2千人の信長軍は、このチャンスを逃しませんでした。「くぼ地の桶狭間を周りから囲み、一気に攻めかかれ」と号令を発しました。一気にくぼ地を駆け下りた織田軍に今川軍は大混乱。「殿、あそこに道があります、あそこから引きあげ、態勢を立て直しましょう」と家臣に言われ、馬に乗ろうとしましたが、馬もこんな巨漢に乗られてたまらないと思ったか、かぼそいいななきとともに義元を振り落とし走り去って行きました。「輿じゃ、輿を持ってこい!」やむなく家臣は輿に何とか義元を乗せて退却しようとしましたが、所詮これでは逃げられません。立往生している義元は、目立つお歯黒で敵の目にすぐわかってしまいました。織田方の服部一忠が立ちはだかり、「義元殿、ご覚悟を!」と言って、太刀を振るいました。義元の胴にばさっと切り込んだ渾身の太刀、確かに手ごたえあった、と感じた一忠には一瞬の油断がありました。「うん?」おかしいと感じた一忠に義元の黒い歯をむきだした笑い顔が浴びせられました。「わしのふくよかな内臓脂肪はおぬしごときの太刀では急所まで届かん!」と言ったかと思うと、一忠を返り討ちにしました。しかし最後のあがきで、もはやここまで、義元は、毛利良勝に組み伏せられ、絶命。今川軍は総崩れとなりました。いくさのゆくえを見届けた病魔大王は、「脂肪太りをばかにしていた義元の負けじゃ」とつぶやき、ふたたび次の標的をさがして天に上がっていきました。

今回の病魔大王は肥満を中心にした討伐劇でした。病魔大王からみなさんへのメッセージをここに挙げておきます。

●BMI(体重(kg)÷身長(m)2)を指標に肥満の程度が評価され、日本人の場合、BMIが18.5以上25未満は適正、25以上30未満は1度肥満、30以上35未満は2度肥満、35以上40未満は3度肥満、40以上は4度肥満と分類されています。

●肥満といっても一番問題なのは内臓脂肪が蓄積している肥満です。それは腹囲(臍のところの胴周囲)に比較的反映されるといわれていますので、それをチェックしましょう。男性では85 cm以上、女性では90 cm以上になると内臓脂肪型肥満が疑われ、この必須項目に加えて、以下の条件のうち2つを満たしているとメタボリック症候群と診断されます。①高中性脂肪血症または低HDLコレステロール血症、②収縮期血圧が130 mmHg以上または拡張期血圧が85 mmHg以上、③空腹時血糖値が110 mg/dl以上。

●過剰なカロリー摂取と運動不足が内臓脂肪を増やします。内臓脂肪は、高血圧、脂質異常症、糖尿病など脳卒中や心筋梗塞の発症にもつながる疾患のほか、脂肪性肝疾患、胆石症、さらにはいくつかの悪性腫瘍の発症率を高くするのではないかとする論文も出ています。まさに肥満は万病のもとといえます。

●体質的に肥満になりやすく、生活習慣が悪くなくても太りやすい方がおられることも確かです。現在の所、それに関する根本的な治療はないですが、生活習慣の改善でできることはしっかりして、治療が必要なものについてはしっかり薬でコントロールすることが大切です。

●金使いは太っ腹、でもそれを食費にかけすぎれば、こわいこわーい太っ腹。

Follow me!