子供と同じ手の皮疹

問題64

30歳の男性。頭痛、発熱、咽頭痛、皮疹を主訴に来院。

現病歴:3日前に頭痛、39.8℃の発熱あり。同夕刻食物残渣嘔吐1回あり、その後悪心は消失。2日前に咽頭痛が軽度出現し増悪し、さらに手掌、手背、足底部などに皮疹が出現したため当院受診となった。受診の1週間前に3歳の息子が同様の症状を呈していたとのこと。現症:血圧 119/71 mmHg、脈拍 71/分、体温36.9℃。項部硬直なし。皮膚、可視粘膜に貧血、黄疸を認めず。両側手背、手掌、指、足底部などに2~3 mm大の周囲発赤を伴う水疱性発疹あり。両側軟口蓋に水疱形成あり。咽頭に発赤あり。肺野にcrackle、wheezeを聴取せず。病的心雑音聴取せず。腹部は平坦、軟、腫瘤触知せず。下肢に浮腫を認めず。

対応として適切なものはどれか。1つ選べ。

(a)プレドニゾロン投与

(b)アシクロビル投与

(c)抗菌薬投与

(d)抗HIV薬投与

(e)経過観察

解説(オリジナルは『Dr. Tomの内科症例検討道場』第3版の症例55)

発熱と咽頭痛という上気道感染症状から始まり、当院初診時に手、足、口内に水疱形成がみられており、文字通り手足口病である。今回の症例は容易だったと思われるが、実際、成人でも最近時折経験するため、小児科だけの病気ではないと注意喚起する意味と思われるが、実際に出題されている。高熱、頭痛から始まり、咽頭痛も出現し、嘔吐も1回あったということ、最後に手、足、口の水疱が出現したところで、何らかのウイルス感染を考える。さらにこの特徴的な皮疹と1週間前に、3歳の子供が同様の症状であったという家族内感染を疑わせる情報も重要であり、成人に発症した手足口病を疑うことになる。

手足口病(Hand, foot and mouth disease)は、コクサッキーA16(CA16)、CA10、エンテロウイルス71(EV71)などのエンテロウイルスにより起こるウイルス性疾患である。乳幼児によくみられる疾患であり、学童以上の年齢層の大半は既にこれらのウイルスの感染(不顕性感染も含む)を受けている場合が多いので、成人での発症はあまり多くないが、最近、成人例も増えている。夏季を中心に流行する。感染者の鼻や咽頭からの分泌物、便などからの接触感染である。飛沫感染も起こる。潜伏期は3~5日とされる。初期症状として発熱と咽頭痛がある。1~2日後に手掌や足底、膝、などに痛みを伴う水疱性丘疹が生じ、口内にも水疱が出現する。これが7~10日間続き自然に治癒し、基本的に予後は良好な疾患である。まれに急性髄膜脳炎、心筋炎合併の報告もある。特にEV71による場合は中枢神経症状の出現に注意が必要である。発熱や痛みについては、対症療法によって緩和する。

解答:(e)

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