ゴム手袋で

問題122
34歳の女性。看護師でゴム手袋をする機会に以前から手に軽度発疹がみられていた。最近、皮疹が悪化してきたため職場で相談された。

問題 誤ったものはどれか。1つ選べ。
(a) フルーツに対するアレルギーを持っていることが多い。
(b) 加硫促進剤によるⅣ型アレルギーが関与している場合がある。
(c) 気管支喘息をもっていることが多い。
(d) 天然ゴムに含まれる蛋白質に対するⅠ型アレルギーが多い。
(e) 検査はプリックテストや特異的IgE測定が有用である。

(類題 2018年認定内科医試験)

解説
ラテックスアレルギー
医療用手袋や日常用品として使用されている天然ゴム製品に接触することによって、接触部位やひどい場合には全身に生じる蕁麻疹、また症例によっては呼吸器症状として咳や喘鳴、最も重篤な場合にはアナフィラキシーショックなど、Ⅰ型(即時型)アレルギー反応生じることがある。これをラテックスアレルギーという。ちなみに石油を原料とする合成ゴムラテックス製品では、タンパク質は含まれずアレルギーの原因とはならない。
天然ゴム製品に残っているタンパク質がアレルゲンとして皮膚に接触したり汗などにより製品から溶出したりすると、皮膚や粘膜に作用し感作が成立する。手の滑りをよくする目的でコーンスターチのパウダーが手袋の内側に塗布されている天然ゴム製手袋では、多くのラテックスアレルゲンを吸着したパウダーがゴム手袋を外す際に空中に飛散し、パウダーを吸いこむことで鼻粘膜などから感作される。
ラテックスアレルギーの患者の半数には、果物や野菜を食べたときに、口腔内の違和感、ピリピリ感、全身蕁麻疹、時にアナフィラキシーショックなどの即時型アレルギー反応を生じる場合があり、これをラテックス・フルーツ症候群という。天然ゴムに含まれてアレルゲンとして問題となる蛋白の主要抗原(Hev B 6.02)とある種の植物性食品に含まれる蛋白の抗原(クラスⅠキナーゼN末端ヘベイン様ドメイン)とが類似した構造をもっているため交差反応性が生じるためと考えられている。特にバナナ、キウイフルーツ、アボカド、クリ、トマト、パパイア、ポテトなどが問題となる。従って、ラテックスアレルギーと診断された患者については、そのような食物に対するアレルギーがないかどうかの問診が重要である。複数の手術歴がある患者、今回の症例のようにパウダー付き天然ゴム手袋を頻回に使用していたり、空中に飛散したラテックスアレルゲンを吸い込む機会の多い職業の患者については注意したい。
上記の症状がある場合は、即時型アレルギーの診断に有用な試験としてアレルゲン特異的IgE抗体のチェックやプリックテストが知られている。ラテックスアレルギーが疑われた際には、血液検査によってラテックス粗抗原と主要なアレルゲンとされるへべインに対するIgE抗体価を測定する。これらが陽性の患者、または、ラテックスアレルゲンを用いたプリックテストが陽性であればラテックスアレルギーと診断される。
ラテックスアレルギーと診断した後は、患者への生活指導として、天然ゴム製品の使用の禁止、症状を誘発した食品やその加工品さらには上記の食品からの回避、職場において雇用者がアレルゲンと接触しない環境づくり、ラテックスに感作された場合はラテックスフリーの製品の使用、などを指導する。症状出現時に備え、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)や抗ヒスタミン薬を携帯させるかどうか、個々の症例で考慮する。
このような即時型アレルギーであるラテックスアレルギーとは別に、ラテックス製品の使用によって生じるアレルギーにはアレルギー性接触皮膚炎もある。ゴムの弾性や耐熱性、耐疲労特性などを持たせるために使用される加硫促進剤や老化防止剤が皮膚に接触することによって生じる。アレルギー性接触皮膚炎は遅延型(Ⅳ型)アレルギーに分類される。症状としては、掻痒感、皮膚乾燥、亀裂を伴う湿疹、などの症状が、接触してから数時間~2日くらい経ってから始まり、数日程度続く。
ラテックスアレルギーと同様、交差反応を起こすアレルギーとして口腔アレルギー症候群が知られている。
口腔アレルギー症候群
果物や生野菜を食べた後、数分以内に唇、舌、口の中や喉に掻痒感やしびれ、腫脹などが生じることがあり、口腔アレルギー症候群という。このアレルゲンは、植物中に含まれる蛋白であるが、食物摂取後、アレルゲンが口腔粘膜に反応してアレルゲン特異的IgE抗体の作用でアレルギーを起こすが、小腸に到達する前に蛋白が消化されるため、主に口腔内だけで反応が終わり、多くの症例では食後しばらくすると自然に軽快する。しかし2%未満の症例でアナフィラキシーショックとなる。
花粉症の患者には、花粉のアレルゲンに対する特異的IgE抗体を有している。生野菜や果物のアレルゲンは花粉のアレルゲンと構造が類似しているため、この花粉のアレルゲンに特異的なIgE抗体が構造の似た生野菜・果物のアレルゲンとも交差反応し、口腔内でもアレルギーが起こることがある。このため花粉症の患者は生野菜や果物を食べたときに口腔アレルギー症候群が発症することがある。これをpollen-associated food allergy syndromeという。口腔アレルギーを起こす果物や生野菜のアレルゲンは熱に弱いので加熱すれば食べることができることも多い。主な原因アレルゲンとしてシラカンバ主要アレルゲン(Bet v 1)と同じグループに属する蛋白やプロフィリンなどが知られている。診断には即時型アレルギーなので問診と特異的IgE抗体でスクリーニングし、特に口腔アレルギー症候群の場合にはprick to prick test(針で新鮮な食物を刺し、その針で患者の皮膚を刺す方法)が優れている。従来からの経腸管的に食物アレルゲンが感作して生じるアレルギーをクラス1食物アレルギーと言うのに対して、花粉との交差反応で経気道的に感作が成立している患者に生じた食物アレルギーをクラス2食物アレルギーという。

解答 (c)

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