一過性意識障害と腹痛

問題40

64歳の女性が一過性意識障害を主訴に来院した。

現病歴:3日前から右季肋部痛を自覚したが、本日夜になり一過性に傾眠傾向がみられるようになったため救急受診した。

生活歴:飲酒歴(-)、喫煙歴 (-)。

現症:意識清明。血圧98/58 mmHg、脈拍104/分、体温38.4℃、Spo2 95%、呼吸数15回/分、身長 157.5 cm、体重 48.5 kg。皮膚、可視粘膜に貧血なし、眼球結膜に黄疸を認める。腹部は平坦、軟、腫瘤触知せず。右季肋部に自発痛と圧痛を認める。反跳痛軽度あり。四肢に麻痺なし。

検査所見:血液所見:白血球6400/μL、赤血球477万/μL、Hb 13.8/dL、Hct 43.5%、血小板13.8万/μL、PT活性70.3%、Fibrinogen 447 mg/dL、FDP 11.7 μg/mL、血液生化学所見:Alb 3.5 g/dL、総ビリルビン4.1 mg/dL、直接ビリルビン2.8 mg/dL、AST 675 U/L、ALT 1402 U/L、ALP 833 U/L、γ-GTP 306 U/L、AMY 26 U/L(基準60~200)、BUN 9 mg/dL、Cr 0.74 mg/dL、免疫血清学所見CRP 7.47 mg/dL

腹部超音波像を示す。

初期治療として輸液と抗菌薬の投与を開始した。この時点での適切な対応はどれか。1つ選べ。

(a)体外衝撃波結石破砕療法

(b)血漿交換

(c)放射線療法

(d)胆道ドレナージ

(e)経過観察

解説(オリジナルは『Dr. Tomの内科症例検討道場』第3版症例64、画像一部改変)

 急性閉塞性化膿性胆管炎(acute obstructive suppurative cholangitis;AOSC)の症例である。急性胆管炎は、胆石や腫瘍による胆汁うっ滞と感染により、発熱、腹痛、黄疸(Charcot の3徴)をきたす疾患である。特に胆汁流出障害による胆道内圧の上昇は、胆汁内の細菌やエンドトキシンの血液中に移行しやすく、敗血症など重篤な病態に陥りやすい。敗血症にいたるとCharcotの3徴に加えて一過性意識障害、ショックもみられ、今回の症例のようにいわゆるReynoldsの5徴がみられる場合もある。血液検査では炎症反応の上昇と胆道系酵素優位の肝障害が認められる。画像検査では腹部超音波検査、腹部単純・造影CT/MRI検査、MRCPによって、胆管拡張所見や閉塞機転の評価が必要である。閉塞機転として、総胆管結石の嵌頓、良性胆道狭窄、胆管癌、膵頭部癌、十二指腸乳頭部癌などがある。今回の症例では、肝内胆管から総胆管にかけての拡張が認められ(図1)、ERCPにより総胆管内の結石が胆道閉塞機転であることが判明した。

図1:腹部超音波検査。肝内胆管から総胆管にかけての拡張が認められる。

 治療は内視鏡的除石術であるが、実際はまず内視鏡的経鼻胆道ドレナージ術(ENBD)、内視鏡的胆道ステント留置術などにより感染をおちつかせてから内視鏡的乳頭切開術(EST)を施行したうえで内視鏡的除石術を行うことが一般的である。

 敗血症は感染に伴う臓器障害であり、救急外来や外来ではquick SOFA、ICUなどの病棟ではSOFAが使用される(表1)。ここでは臓器障害は、呼吸器、止血(凝固異常)、肝臓、心血管、中枢神経(意識障害)、腎臓、のパラメーターに基づいてスコアリングされる。

表1:SOFAスコア。感染に伴う臓器障害を評価するスコアとして集中治療病棟で使用される。感染症があって、2点以上の増加がある場合、敗血症の可能性が高い。

解答:(d)

その他に聞かれる可能性のある項目

●超音波所見を提示して、次に行いたい検査を聞く問題が出題されている。腎機能さえ問題なければ造影CTであり、これが正答肢として公開されていたが、ERCPでの精査前にはMRCPもしておきたい。実際の問題ではMRCPではなくMRIが選択肢にあり、微妙に誤答肢と言えそうである。いずれにしても胆道閉塞の原因が結石なのか悪性疾患による胆道狭窄なのか、閉塞性黄疸の原因精査である。

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