待望のワクチン

今日は、病院職員のワクチン接種初日でした。新型コロナウイルス(COVID-19)が2019年に(COVID-19の19は2019年に発生したという意味です)武漢肺炎として初めて報告されて1年以上がたち、ようやくワクチン開発の努力がみのり、日本でも医療従事者から優先的に接種が実施されるようになりました。このワクチンは2回の接種により、95%という高い確率でCOVID-19の発病予防効果があるとされています。ちなみにインフルエンザワクチンの発病予防効果は20~60%とされています。確かに「ワクチンうったのにインフルにかかったということは、本当に効果があったんですか?」と患者さんが言われることがよくありました。インフルエンザワクチンの場合は、どちらかというと、インフルエンザの発病を予防するというよりも、かかっても重症化させない効果が最近ではよく強調されています。ところがCOVID-19の今回のワクチンはインフルエンザワクチンよりも発病そのものを予防する効果があるようです。「患者さんから自分にうつることはないだろうか?」という不安と闘いながらこれまで患者さんの治療に関わってきたわれわれ医療従事者にとっては、ようやくこの日が来たという思いがあります。

ちなみにワクチンによる発症予防効果が95%ということですが、先ほどまで私自身はこの意味が、100人ワクチンをうてば、95人は発症せず、残り5人には発症するという意味だと思っていましたが、正確にはそうではないそうです。ワクチンを接種した集団と接種しなかった集団を比べたら、接種した集団の方が、接種しなかった集団よりコロナ発病率が95%少なかったというのが正確な意味です。どう違うの?と思われるかもしれませんが、想像してみてください。実際は、コロナに感染しても発病していない人たちがどちらの集団にも同じ確率で混じっている可能性があります。するとワクチンそのものが発症を予防したといいきれる場合を絶対数の人数で話をすることはできず、あくまで発症するリスク(確率)が5%/100%=1/20ぐらいに減ったというデータが示されているわけです。

ではこのワクチンをうてば、これまでの手洗いやマスクは不要、ということになるのでしょうか?いろいろな点で、答えはNoです。もちろんCOVID-19以外にも世の中には無数の病原微生物がいるわけであり、それらの感染はこれまで通り起こりえます。また、COVID-19についても、ワクチンが感染を起こさないようにしてくれるとは誰も言っていません。ウイルスの感染(体内に入ること)自体を予防するのではなく、ウイルスが体内にはいっても、そこから、発病(咳、発熱、頭痛、など何らかの症状が出ること)を予防してくれるというのです。感染そのものはどの程度予防できるのかはまだよくわかっていません。ということは、ワクチンをうったと言って、手洗い、マスクなど感染予防策をせずにいると、発病していないけれどウイルスを体内にもっている感染者があちこちに出てくることが考えられます。そのようなワクチン接種済みの人に感染したウイルスが、どれほど他の方に感染する力をもっているのか、まだよくわかっていません。もちろんそのような人と接して、たとえそのウイルスをうつされても、ワクチンを接種していれば発症しにくいということになり、たとえ発症しても重症化せずにすむ可能性が高いと思われます。ところがこれまでワクチンに対する著しいアレルギー歴があった方など、医師からはワクチン接種を勧められない方が、少ないながらも一定の頻度ででてきますので、そのような方に、COVID-19を感染させ、最悪の場合は重症化させる恐れもあります。またさまざまな理由で、身体の免疫力がおちている方にとっては、ワクチン接種によって、どこまで発症予防効果があるのかについてはまだまだこれから詳しく検証されてくる話です。接種対象者(現在、日本では16歳以上を対象者とするようです)がすべてワクチンをうち終わるにはまだまだ時間がかかります。また、製造されて間もないワクチンなので、どれほど効果が持続していくのかもよくわかっていません。ウイルス自体が変化してその感染力などがかわる変異株も出現してきており、これらが今のワクチンでどこまで有効か、という問題もでてきています。以上の点から、手洗い、マスク、3密をさける、などこれまでの感染予防策は、これからも当面続けていかなければならないと思います。

最後に、注射を受けた感想です。刺入時にチクっとしましたが、これまでのインフルエンザワクチンなどでしたら薬液の注入が始まるとじんわり痛みがでてきて、薬液が入り終わって針を抜く、という感じでしたが、そのじんわりした痛みはあまり感じなかったです。終わってから、しばらく職員同士で15分ほど経過観察していましたが、私も含めて、別段、副反応は起こっていないようでした。ただ、私はそのあと、少し体がポカポカした感じで少し汗がでたりしていたので、わずかながら何らかの身体の反応はあったのかもしれません。一般に、1回目より2回目の副反応は強いといわれてはいますが、1回目がこの程度であれば、2回目ももちろん受けるつもりです。うつかうたないかは、各自が最終的に決めることではありますが、これまでのところ、安全性はかなり高いワクチンであることは確かです。そもそも副反応が接種者に誰一人でないようなワクチンはありません。(後日談ですが、接種翌日は、注射部位が痛みましたが、腕が上がらなくなるほどではありませんでした。)

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