お好み焼きのあとのバレーボールで呼吸困難

問題9

38歳の女性。呼吸困難と全身掻痒感のために搬入された。

現病歴:夕食に豚肉の入ったお好み焼きを食べた。その後、バレーボールの練習に行き、練習中に喘鳴が出現した。1か月前に喘息症状があり近医でサルブタモール吸入薬を処方されており、これを用いたところ呼吸困難はやや軽減したが、全身に著しい掻痒感が出現したため救急受診された。

現症:意識清明。体温37.1℃、脈拍90/分、整、血圧100/73 mmHg(救急室で経過観察中74/40 mmHgまで低下)、Spo2 93~95%、顔面も含めて全身に発赤と膨疹とを認める。

この患者に対する対応として適切なものを2つ選べ。

(a)バレーボールなどの運動をやめる。

(b)小麦成分のある製品を回避する。

(c)運動前に、小麦成分のある製品を飲食しない。

(d)アスピリンの内服歴について聴取する。

(e)速効性を期待してステロイド剤を点滴する。

解説(オリジナルは『Dr.Tomの内科症例検討道場』第3版 症例71

 経過からは明らかに食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis;FDEIA)と考えられ、救急室では血圧も70 mmHg台に低下し、かなり緊急性の高い事例である。このように病歴をきちんととって初めて病態がつかめる。特にFDEIAの原因としては小麦、甲殻類などが大半を占めているため、今回はお好み焼きの中の小麦粉が原因ではないかと思われる。ほとんどの場合は食後2時間以内の運動により誘発される。運動を中止したり、小麦成分を含む食事を全面的にやめさせたりするのではなく、原因となる食物成分と誘発因子が重ならないように指導することが重要である。またアナフィラキシーの誘発には、食物摂取と運動だけでなく、アスピリンなどのNSAIDsの内服、飲酒、入浴、花粉飛沫、疲労、睡眠不足、感冒、ストレス、月経前状態、高温、寒冷、多湿など複数の因子が関わっているとされている。このためこうした因子がなかったかどうかについても問診が必要である。一般にアナフィラキシーに即効性があるのは0.1%アドレナリン0.3 mgの筋注であり、それが無効の場合は、緊急処置としてアドレナリンの静注、カテコラミンの持続静注、グルカゴンの静注(特にβ-阻害薬投与中の患者ではアドレナリンが効きにくく本剤が有効)を行う。ステロイドやH1およびH2ヒスタミン受容体拮抗薬には、即効性には欠けるが、初期症状が改善した後のアナフィラキシーの再燃、いわゆる二相性反応の発症を抑制する作用があるといわれている。アドレナリンの適応は、アナフィラキシーの重症(グレード3)の症状(不整脈、低血圧、心停止、意識消失、嗄声、犬吠様咳嗽、嚥下困難、呼吸困難、喘鳴、チアノーゼ、持続性の強い腹痛、繰り返す嘔吐)、気管支拡張薬の吸入で改善のない呼吸器症状、などであり、今回の症例では十分適応となる。

解答 (c)(d)

試験の傾向

アナフィラキシーであることは比較的容易に診断できるため、このような食物起因性運動誘発性のような状況で生じた症例を提示されたり、ここにNSAIDsを内服している状況が加わった形で症例提示されたりすることが多い。また基礎知識を聞かれることも多い。ステロイドがアナフィラキシーでは即効性がないことを聞くのは定番の問題である。

そのほかに出題される可能性のある項目

●大豆のFDEIAでは、抗原特異的IgE(IgE-RAST)は偽陰性が多い。その意味でも問診が重要。

食物因子が小麦の場合は、ω5グリアジンがアレルゲンコンポーネント(特異的IgE抗体が結合する蛋白質)である。

●成人のFDEIAの原因抗原で最も頻度が高いのは小麦である。

実際の症例では

緊急性をもって対応し、一晩経過観察の上、翌日には退院された。

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